BLACK&WHITE
光があった。 暗闇しかなかった世界に、突如現れたのだ。 小さく瞬き、いつか――――否、今すぐにでも消えそうな、儚い光。なのに何処か、力強さを感じさせる光。 汝が、そうなのか。 声にならぬ声を投げつける。 届かぬと知っていて、尚、問い掛ける。 汝が、我の望みし者なのか。 悠久なる時の流れを断ち切ってくれる者。 いつ終わるとも知れぬ苦痛を癒してくれる者。 母たる存在のもとへ導いてくれる者。 待っていたのだ。ひたすらに。身動きひとつ取れぬこの地で。 ずっと……待っていた。 自分を、滅ぼしてくれる者を。その存在を。 「来よ――――我が元へ……」 囁きは空間に呑み込まれ消える。肉声となり、彼(か)の人間の元へは決して届かない。 故に思念のみで囁きつづけるのだ。その想いすらも届かないと、悟っていても。 夢を介し、時には風を介し、彼(か)の人間の娘へ、いつか届くようにと。 悪夢に変わり、嵐となって娘に襲いかかる声でも。 娘にとって、幸福とは呼べぬ残酷な願いを突きつけて。 死を厭い、生を全うする為に生まれてきた娘。 滅びを望み、生ける存在を踏み潰す為に生まれた我。 双方の間に通い通じる感情など存在しない。 憎むべき人間。滅ぼすべき人間。愚かさを身に纏う人間。 だからこそ憧れの対象であり、唯一にして絶対の悲願を達成してくれる存在であり、恋焦がれる存在でもある。 「我の元へ――――」 はやく……。 そして彼(かれ)は暗闇の中、誰一人預かり知らぬ場所で。ほほえみ、ささやく。 想いに似た腕を伸ばし、触手にも似た想いを伸ばし。 彼(か)の人間の元へ、願いを掴む為に。 紅き一対の瞳は開かれる。 |
――終劇。
稿了 平成十二年二月二十日日曜日
改稿 平成十二年二月二十一日月曜日