A HOUSE CAT
リナを見ていると、時々思い出す。リナと出会う前に飼っていた猫を。 いつだったか、レゾが気紛れで猫を拾ってきたのだ。いま思えば、合成獣にでもするつもりだったのだろう。全身真っ白な毛並みで、何故か人慣れしていた。その割にプライドが高かった。 餌をやろうと思っても食べなかったり、構うと爪で引っかいたり。自分が構って欲しい時だけねだるのだ。 リナはあの猫に似ている。 気位が高く誰かにひざまずいたりしない。気分屋で自分の意見をころころ変える。自分の都合のいいように。 構って欲しい時だけ甘える。機嫌の悪い時に手を出すと牙をむくのだ。 睡眠が好きで朝、なかなか目を覚まさない。 寒さに耐性がついていない。 ふとした仕草も猫の動きにそっくりだ。 手を伸ばすとするりとかわして逃げる。肌に触れると目を細めて、まるで猫がのどを鳴らしているようだ。背筋をぴん、と伸ばして歩く。しなやかな肢体に――――。 「ねえ、なに考えてるの?」 夜になると輝きを増す瞳――――囚われると逃れられない……。 頬が熱い。リナの両手に包まれて。 「……。猫みたいだと思ってな」 リナが何時の間にか傍に来ていた。さっきまでベッドの上に寝転んで、魔道書を読んでいたのではなかったか。 「なにが」 問いには答えず、椅子から立ち上がった。ひょいっとリナを抱き上げる。 「っきゃ……! ちょっ、なにするのよっ」 こんなにも軽い躯。あの猫も、抱き上げると爪を立ててきた。 「スキンシップだ」 ひとこと言い捨て、リナをベッドの上に投げ出した。逃げられぬよう、すぐに上からのしかかる。 「はっ?」 耳元に唇を滑らせると、くすぐったそうに身をよじらせた。 ――――ほら、こんなところまで猫にそっくりだ。 「ぜる……っ」 「猫に触れるように優しくしてやるから、安心しろ」 「なによそれッ」 他にも何事かを喚こうとする口を塞ぎ、文句を押し込めた。 あの猫は気付けば姿を消していた。 住み付いても、結局は道具にされる運命だったのだ。逃げた猫の判断は正しい。 だが――俺は、手に入れた猫を手放す気にはなれない。去られる悲しみなど、一度知ってしまえば二度と味わいたくないからだ――――。 ――終。 あとがき |
稿了 平成十二年三月十二日日曜日
改稿 平成十二年三月十六日木曜日