声が、聞きたかった。最初はそれだけ。
だけど、声が聞きたいだけで電話した、なんて言ったら絶対に馬鹿にされるから。無理やり用事を作った。友達に頼み込んで、半ば奪った遊園地のチケット。
最近、会っていないから。久しぶりに遊びに行こうと、電話した。珍しくも乗り気だったのに。直前になって、『仕事が入った』――――……。
忙しいのは知ってる。だからなかなか会えない。疲れて家に帰ってる時に、ただ声が聞きたいだけで電話されたらイラつくだろうって、思ってるから電話もずっと控えてた。でも。
最後に会ったのは一ヶ月前。最後に電話をかけたのは二週間前。それから今日まで何の音沙汰も無くて、久しぶりに聞けた声。喜んだのも束の間。遊園地に遊びに行く予定をあっさりキャンセルされて。それであたしが怒らないとか、不安にならないとか、本気で思っているのだろうか?
あたしは一体、何なの? 都合のいい時だけ都合のいい思いが出来る楽な遊び相手? そこら辺の行きずりの女と一緒? 後腐れもなく別れられる女だとでも?
冗談じゃない。空回りしてるだけならいっそ終わらせた方がすっきりする。あたしだけ好きでも意味が無い。いくら好きでも同情で一緒にいられたくなんかない。
恋愛が、相手を好きなだけで成立するなら、これほど苦しまずに済むのに。楽に、なれるのに。一緒にいるだけで幸せになれるなら。ほかの何も考えなくていいのなら。
『……悪ィ。行けなくなった』
罪悪感がそうさせたのか。彼はそれだけを告げた。言い訳の一つも言わなかった。理由を尋ねたのは、あたし。言い訳を言わせたのはあたし。食って掛かったのはあたしだ。どうして、楽しみにしてたのに、と。
彼の口から出た仕事の二文字に、もう何もかもがどうでもよくなった。
仕事がそんなに好きなら仕事と結婚すれば、と冷たく言って。相手の反応も待たずに電話を切った。
――――言いすぎた、かな。
仕事仕事の毎日で、彼だって、たまには羽目を外して遊びたいだろう。あたしから持ちかけた話だけど、彼も楽しみにしていたようだった。遊びに行けなくなって、何もあたしだけが悲しかった訳じゃない。会えなくて、電話だけの日々で。電話だって毎日かけていた訳じゃない。
会いたくて、もっと声を聞きたいと思っていたのはあたしだけじゃない。そう、思いたい。
――――でも、違ったら?
彼にはもうあたしなんてどうでも良くなっていたとしたら? あたしが怒って電話を切って、かえって気まずい思いをしなくて済んだ、なんて――彼が思っていたら? あたしは彼の仕事場まで干渉できない。彼が仕事先で、誰と何をしているのか、なんてわからない。
……会いたい。顔を、見れば。こんな不安も何もかも、消えて無くなるに違いないのに。こうやって膝を抱えて丸くなって、淋しさだけ抱えなくて済むのに。
もう顔なんて思い出せない。その内に声だって忘れてしまう。電話なんかじゃ満足できない。ケンカ別れで終わりになんてしたくない。会いたい。
会いたい、のに、会えない。
あんな電話の切り方をして、のこのこ会いになんて行けない。何をしに来たんだ、と冷たい目で見られたら……。自分でも意気地が無い、らしくないと思う。この程度で落ち込むなんて、あたしじゃない。
自分にそう言い聞かせても、浮上できないのは。いい加減、限界に来ているからなのか。口を開けば本心とは別の言葉が出る。顔を突き合わせたって素直に笑いかけられるかどうか。
こんな関係に、いつからなってしまったのか。一緒にいても楽しくない。どころか気まずささえ感じるような関係。
はじめは、こうじゃなかった。ただ楽しいだけの日々――とは確かに言えなかったが。それでも今より自然に笑えていた。不安を感じても、些細な一言で浮上できた。
それがいまはどうだろう。笑う余裕も、ない。
声を聞けば、顔を見れば、きっと何もかもが――不安も不満も、全部、が。消えるのに。
「会いに来なさいよね……っ」
不思議と、いつも。あたしが不安に襲われる時。来てくれた。狙いすましたように。隠しカメラでも何処かに仕掛けているのか。そう冗談まじりに言った時さえいまや懐かしさに変わって。思い出に、変わって。
そうして、彼自身さえも思い出に変わってしまうのだろうか――……。
イヤ、だ。変えたくない。現在(いま)を思い出になんて、変えたくない。あたしが大切にしたいのは、思い出なんかじゃない。あたしが欲しいのは思い出なんかじゃない。優しい言葉でも、美しく彩られた甘美な夢でもない。愛だの恋だのとキザなセリフを吐く恋人でもない。無骨でも不器用でも、あたしを傷つける言葉しか持たぬ男でも。その彼と、先を歩く未来だ。過去なんて大切に思っていても意味なんかない。過去をおろそかにするという訳ではない。必要以上に過去を振り返って懐かしみたくないだけ。
「――――――――ッ」
なんであたしが、と思ったのも一瞬だった。
こっちが行動を起こさなければ硬直するばかりの事態。だったら今動かずしていつ動くのか。待ちの態勢なんて、性に合わない。
パジャマから普段着へと着替える。この時間じゃあ、バスなんて動いていない。歩きか自転車だ。電車を使うほど離れていない。彼の家まで。
自転車のカギを探し出し、玄関へ。
その時だった。
ぴんぽーん。
家の中に響いた、あたしの心とは裏腹な軽快なチャイム。夜遅く、まわりも静かだから余計に大きく聞こえた。
ドアノブにかけていた手を電撃でも浴びせられたように引っ込める。
こんな時間の訪問者。……期待、しても、いいのだろうか。彼が来てくれたと、期待しても。この期待は裏切られないのだろうか。
ばくばくと騒ぎ始める心臓。すーはーと深呼吸一つして。
あたしはゆっくりと玄関のドアを開けた――――。
あとがき(いや、なかがき/爆)
突発で思いついたネタです。本当に突発。ふとB’zの歌の一節が浮かび、そこからばばばっとネタが湧いて出てきました(笑)。誰が主人公か……は、もうおわかりですね? 相手役が誰か、は皆様のご想像にお任せ致します。こいつかな、と思った名前を返却所にカキコしてくださると嬉しいです。ちなみに。下に続きがありますが、相手役の一人称で書かれてますので想像を裏切られたく無い方は見なかった事にして下さい(笑)。最後まで二人とも、名前出てきません。苦労した……。
まあそんなわけで、これはB’zの歌をネタにしてます。多いなぁ、歌ネタ。正確にはB’zネタか。他にネタにしたい歌はたくさんありますが……こういうのは閃きですね。思っていても書けない。次はT.M.Rでもネタにしたいところですが、はてさてどうなることやら?
閑話休題。これも読めばわかると思いますが、現代版パラレルです。こんなのもたまにはいいでしょう。いやぁ、書いてて楽しかった(笑)。もちろんパラレルじゃない話も好きですが。パラレルは好き勝手できるのでいいですね。今度はまた別のむちゃくちゃな設定のパラレルでも書こう。自分で設定を考えるとあちこちいじりませるからいいです(笑)。パラレルじゃなくてもいじるけど(爆)。妄想爆発。……ダメダメだね……。
尻切れとんぼですが(内容も……/涙)、この辺で〆。
追記。↓から始まる部分は異様に甘いです。ソシテ妖しいです(自滅)。ヤバイな〜、ヤバイのは読みたくないな〜とおっしゃる方は、まぢ、読まないでくださいね。裏行きの話にするほどヤバくはない(筈だ……)ので、大丈夫かとも思いますが。中途半端なところで終わるのはもう恥ずかしくて書けなかったからです。勘弁ぷりーず……(死)。そして、↑に書いたのが実は本編で、↓のはおまけのつもりだったなんて口が裂けたらべらべら喋ったりして(をィ)。……何故にこうも長くなるか……? 本編より長いおまけ(−−)。お得な気分で楽しんで下さい……(滅殺)。
もう一度チャイムを鳴らそうかと手を伸ばした瞬間だった。がちゃり、と開くドア。
誰が来たかも確かめないで、開けるか普通? 無用心だと内心で苦く笑って。ひょっこりドアから覗いた顔に、安堵した。同時に後悔。何故なら見えた頬に涙の痕跡を見つけたからだ。目も、赤く充血している。泣いた証拠。
驚きで見開かれる瞳。
その瞳が怒りなどの不機嫌な色に染まる前に、右手を突き出した。
「カギ」
「………………は?」
「家のカギを出せって言ってんだよ」
我ながら唐突な言葉だ。電話を一方的に切られたのが十数分前。そして十数分後、出会い頭に開口一番がこれでは誰だって怒る。こいつも、例外ではなかった。驚き一色だった瞳が瞬時にきらきらと輝き出す。怒りの色に。
こんな時だのに、綺麗だと思った。
「なんでよ!? 大体、いきなり来てなんなのよッ! あたしはまだ――」
あー……ごちゃごちゃとうるせぇ。こうなると半ば、予測はしていたが。実際なってしまうと対処法に困る。
「いいから早くカギ出せ」
うんざりして肩を引っ掴み、文字通り、目と鼻の先にまで顔を近づけて言った。
「……ッ……」
いきなり接近されて体が竦んだのか、ぴたりと口を閉じる。やがて怒鳴っていても何の進展も無いと諦めたのか。
「……わかったわよ」
むすぅっと不機嫌に言い放つと、奥に引っ込んだ。カギを取りに行ったのだろう。それほど待たずして戻ってくる。手の中にはカギ。
差し出されたカギを奪うように受け取った。
「――で? 何をしようって言う……」
言うのよ、と言いたかったのだろうが、言わせなかった。問答無用で肩に担ぎ上げる。思ったよりもずっと軽く華奢な体だった。女らしさの欠片も無いと日ごろから、からかっていたのに。前言撤回を余儀なくさせられるほど女らしい体つきだった。それなりに出るところは出ているし引っ込んでいるところは引っ込んでいる。男の自分とはまるで違う体格――当たり前と言われてしまえばそれまでだが。それすら、わからぬほど。気付けぬほどの距離が開いていたのか。こいつと、自分の間には。
「っきゃ……ッ!? ちょ……っと、何するのよ!」
バタバタ暴れられて、流石にバランスを崩しかける。こっちは左腕一本でコイツの体を支えているのだ。危なっかしい。
肩やら背中やらを叩かれても別段、痛いと思わないが、足まで暴れられると不安定この上ない。
「落ちたくねえんだったらじっとしてろ」
愛想もクソも無く言い捨て、玄関から出た。受け取ったカギでドアに施錠し、そのまま駐車場へ向かう。一言が効果あったのか、暴れるのはやめた、らしい。が。
「下ろしてよ! 何処に行くつもりなの!? あんた状況がわかってるわけッ!?」
口の方は先ほどよりも速く回転している。やかましい。とりあえず悪いとは思っているので言わせておく。反論できるならしている。出来ないから何も言わない。言えない。
こいつに甘えてばかりだった自分。言い返せない要因ばかり――否、言い返せない要因しか作ってこなかった。
――――この程度の怒りで済むならいくらでも怒られてやるさ。
それで、コイツの気が済むなら。関係修繕が出来るなら。いくらでも怒られてやる。
そろそろ終電にもなろうかという時間帯だ。街の灯は消えないが、遅い時間帯であるのは確か。近所迷惑だからボリュームを落とせ――言いかけて、中途半端に開いた口を閉じた。気が済むまで言わせた方がいい。それに、ここで口を挟もうものなら倍の音量でがなりつけられるだろう。
「聞いてるの!?」
聞いている――とはまた言わず、黙々と歩みを進める。駐車場はそんなに遠く離れていない。五分とかからず行ける場所にある。ありきたりな黒のセダン。いつだったか、黒が好きだと聞いてこの車に乗り換えたのだ。
車のドアを開け、助手席(なか)に抱えていた人間を放り込む。
「……った……もうちょっと優しく扱いなさいよ!!」
「へーへー。そりゃ悪かったな。オレはこういう扱い方しか知らねえんだよ」
肩を竦め、ドアを勢い良く閉める。運転席に乗り込みエンジンをかけた。
「ねぇ。さっきっからずうぅぅぅぅっと黙ったまんまで、あんた一体何を考えてるのよ」
怒鳴り疲れたのか。落ちついて問う彼女に沈黙を返す。
安易な答えならすぐ浮かんだ。
罪滅ぼし、か? いや違う。オレの勝手なワガママだ。コイツの笑顔が見たかった――それだけ、だ。仕事も何もかも一切合財を忘れて、こいつだけを考えていたい。それだけの為に、わざわざ車を走らせてきたのだ。
考える間にも手と足は止めない。アクセルを踏み込み、車を発進させる。緩やかに脇に流れて行く周辺の色。
「いきなり家に来るかと思えば……事情説明も何も無しで車に押し込むし。これじゃ誘拐じゃない。あんたわかって行動してるの?」
突拍子も無く耳に入った言葉に、つい吹き出した。
誘拐。誘拐、か。そうだな。たしかに。玄関まで出て来たこいつを拉致して来たも同然だ。ろくに口もきかず、車に詰め込んで。これでオレ以外の人間がこいつを攫ったのだとしたら、こいつはどんな対応を取るのだろう? 同じように相手へ食って掛かるのか。身の危険も考えず。
「……なに笑ってるのよ」
「いや。オレがたとえお前を誘拐したとしても、お前は黙って攫われるようなタマじゃねえだろ」
「余計なお世話よ! ってだから、そうじゃなくて! なんでこんなことしたのよ」
なんで? 簡単だ。一緒にいたかったから。他に何の理由がある? ずっと会えなかった。これからだっていつ会えるかわからない。それなら多少強引だろうが(誘拐と言われようが何だろうが)二人きりで会える方法を選んだだけだ。いっそこのまま何処か知らない土地へ連れ去りたいくらいだ。
「イヤか?」
前を向いたまま問いかけた。運転している為、隣にいるやつをじっと見つめながら、なんて芸当を出来ないのが悔しい。
「へ?」
「オレといるのはイヤか、って訊いたんだよ」
視界の隅で顔を逸らすのが見えた。
「……イヤじゃ、ないけど」
「ならいいだろ。一緒にいてぇから来た。その理由だけじゃ不足か?」
「――――……」
聞こえた溜息は、何の理由からか。
「あんたズルイわよ。さんっざんあたしを引っ掻き回して……」
「悪かったな」
言うなり急ブレーキをかけた。衝撃を予測していたオレと違い、助手席に座る恋人は派手に前のめりに倒れる。シートベルトを着けていなかったらフロントガラスに直撃だった。マズかったか、と他人事のように思う。
「あ、ああ安全運転しなさいよッ!」
「後続車がねえことくらい確認してる」
「だからって急ブレーキかけないでよね! ダッシュボードに頭ぶつけたらどうしてくれるのよ!!」
「ぶつけなかったからいいだろ」
「いいわけないでしょ! あたしはこんなとこであんたと心中なんてご免よ!!」
「オレはお前と心中しても構わねぇけどな」
「冗談言ってないでっ! スピンでもしてたら……」
「〜〜〜〜っとにうるせぇな」
皆まで言わせず口を塞いだ。こんな一を言えば十が返ってくる会話も、接吻さえ。何十年ぶりかのような錯覚。
「……さっきの、悪かった、って、何に対して謝ったのよ」
大人しく腕の中に収まってる躯。小さくて細くて頼りない。ちょっと力を込めれば、折れたり崩れたりするのではないかと恐怖する。
「全部」
「抽象的ね」
「オレに何々が悪かったって全部言わせてぇのか? それで不機嫌になりてーってんならいくらでも言い連ねてやるけどよ」
「最低」
軽口の応酬さえ、楽しくて。低く笑いながら戯れに額や頬や鼻の頭に口付ける。
「そーだな。最低だな。だから悪かったって謝ってんだろ」
「それのどこが謝ってんのよ。開き直らないでよね」
右手でやわらかな頬のラインを辿る。くすぐったそうに瞳を閉じて、まるでキスをせがんでいるようにも見える。瞼に唇を落とし、頬を包んだ手で顔を上向かせて今度は唇に。
「オレの見えねえとこで泣くなよ」
「誰も泣いてなんかいないわよ」
「下手な嘘だな」
隠せていない涙の跡。目の充血。泣いたあとの特有の掠れた声。オレが気付いていないとでも思っているのか。
「…………泣かせてる当人がなに言ってんのよ偉そうにっ」
やや涙声のまじる声にずきずきと疼く胸。
オレのいないところで泣かれるなんざ真っ平だが、目の前で泣かれるとどうしていいのかわからない。全くもって男はワガママだ。ワガママだと自覚していながらどうしようも出来ないのだからタチが悪い。確信犯ほどタチが悪いものもない。
「悪い」
罪悪感は謝っても消えない。謝っても相手が楽になる訳でもない。ならば何故謝るのだろう?
「悪いわよ! あんたなんで謝るの!? 何に、誰に対して謝ってるの?」
「お前以外に誰がいる」
「謝って許されるとでも思ってる訳?」
許されたくて謝る訳じゃない。謝れば自分が楽になれるから。少なくとも謝れば沈黙を返すより楽だ。
「まさか」
「じゃあなんで謝るのよ」
「自分の為だろ」
「……。本ッ当にあんたって最低」
ふと、堂々巡りな会話を変化させたくなった。言えば必ず馬鹿と言われそうだが、一度は言ってみたい言葉。馬鹿と言われても構わない。氷よりも冷めた眼差しで貫かれようと構わない。
「最低でも、オレが好きなんだろ?」
暗い車内。車の周りに街灯は無し。そして焦点も合わぬほど近付いた顔と顔。オレがどんな表情で言っているのか、見えているだろうか。
「――――ッ――――」
動きを見せた腕を咄嗟に抑え込む。平手打ちはイヤだ。
「信っじらんない! 厚顔無恥!!」
「何とでも言え」
「馬鹿ッ、最低っ! 自己中心的で自分のこと以外なんにも考えてなくて、人を振り回すだけ振り回しといて謝れば済むって本気で思ってて!!」
……たしかに、何とでも言えと言ったのはオレだが。そこまで言うか?
「でもそうよ、悪かったわね! こんなどうしようもない男でも好きなのよッ! 自分でも不思議よ、なんであんたなんか好きなのか! 他に楽できる男なら周りにいくらでもいるのにッ! なんであんたじゃなきゃダメなのか全然わからない!」
――――殺し文句とは、これを言うのか。
堪らずきつく抱き締めた。
「イ……ッ……ちょ、苦し……っ!」
「好きだ」
他に、言葉が思いつかない。何を言えばいいのかわからない。自分の気持ちをどう表せばいいのか。負けっぱなしだ。自分のこの好きという不確かな感情も、相手のそれには永遠に勝てない。
完敗、だ。
「なにを、いまさら……」
今更でもなんでも。他に言うべき言葉が見つからないのだ。だから、ただ単純なこの三文字を言い連ねるしか出来ない。今の、自分には。
「好きだ。好きだ。好きだ。好きだ。好きだ――――」
「――……あんたって、ほんと、馬鹿」
背中に回された手が暖かくて。不覚にも泣きそうになった理由を相手のせいにした。
おまけ。
「――――で、結局何しに来たのよ」
「行きてぇんだろ、24時間営業の遊園地(作者註:あるということにしてください/汗)」
「――――……」
「一晩、遊びに付き合ってやろうかと思ってな」
「……付き合ってくれるのは、一晩だけ?」
「――。望むなら一生でもいいぜ?」
「しょーがないからそれで許してあげる」
「そりゃ光栄だな」
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