Same Side

 

 

傷つく事に 疲れて 傷つけるのは怖くて

 

 

 


 神様、神様。
 どうか教えて下さい。私の質問に応えて下さい。
 答えを下さい。

 なぜ人間は生きるのでしょうか。
 なぜ生ある者は死を忌み嫌い、生にしがみ付くのでしょう。




 昔、ある竜族の方に「生きている存在が生き続けようとすること――それは当然の理だ」と言われました。
 けれど私は疑念を抱いてしまったのです。
 生きる意味、意義を失ってしまったのです。
 私はどうして生きているのか。
 生きる価値が何処にあるのか。




 私は最愛のヒトを殺しました。
 彼は私にとって何より、誰より大切で掛け替えの無いヒトでした。
 愚かにも、喪って初めて気付いたのです。
 私は高望みなんてしていませんでした。
 彼が何処にいても良かった。誰を想っていても構わなかった。
 ただ、彼に生きていてほしかっただけなのです。




 でも彼は。
 私自身、気付いてはいなかった願いの正反対である死を。
 滅びを望みました。
 ……私は、彼の想いを受け入れました。
 彼の生を望む私が。
 彼を殺しました。




 私は彼の為に生きていたのではありません。
 私は私の為だけに生きていました。
 ですが彼の死で私の存在理由を失いました。
 もう生に価値を見出せないのです。
 彼のいない世界で生きていても楽しくないのです。
 あれほど生に執着していた私が。今は生に何の未練も無い。
 なんだか滑稽です。過去の私はなんだったのでしょう。




 最早、だれも、なにも私を此岸に留められません。
 見聞きし、得た情報でしか知らぬ未到達の地の、素晴らしい芸術だと噂される程の景色も。
 舌をとろかす美味な食事も。
 有れば有った分だけの使い道のあるお金も。
 煌びやかに身を飾り立てる豪奢なドレスや世界に二つと無い珠玉でも。
 天候が許せば毎晩のように行っていた、趣味の盗賊いぢめも。
 暇さえあれば研究に勤しんでいた魔術も。
 私はそれらに興味も関心も抱けないのです。
 本能の欲求をも私の中から失われてしまったように思えます。




 いまでは、かつて共に旅をした仲間の顔すら思い出せません。
 いまでも傍らに在る自称保護者の存在さえ煩わしいのです。
 彼の求愛の言葉も雑音でしかありません。




 ああ神様――――。
 私の心を占めるのは私が殺した彼だけなのです。
 彼に会いたい。
 彼と話したい。
 彼を一目、見たい。
 しかしどの願いも虚しく空回りするのみ。
 肉体は塵と化し声は耳に木霊するだけ。
 喪失感だけが大きく育っています。
 彼の死を、滅びを痛感させられる度に。
 ――――そうして己が所業を悔いるのです。




 神様。
 このままだと私の心は彼と同じく憎悪で満たされてしまいます。
 彼を亡くしたのに変わらず月日の流れる時間の残酷さ。
 彼は死んだのに変わらず在り続けるこの世界の身勝手さ。
 彼が滅んだのに変わらず生きているあらゆる生物の傲慢さ。
 私も彼と同じように、全ての存在を憎んでしまいそうです。




 神様、神様。
 どうか教えて下さい。私の質問に応えてください。
 答えを下さい。
 私は、どうすれば良いのでしょうか。

 なにをすれば?

 

 

 

気付けばまた 一人きり 物思い夜は更ける

 

 

――終劇。

稿了 平成十三年九月一日土曜日
改稿 平成十三年九月七日金曜日

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

タイトルの「Same Side」は
実は曲の歌詞とはあまり関連が無く
かつてのルークと同じ側にリナが立っている、
という意味で使っただけです。

とゆーことでこの話はルークリナでした。



ってゆーかコレ私か?(……)